土地・建物所有者の問題(文責:弁護士 鴨田 視寿子)

  • 地震により、隣家の屋根瓦が落ち、自宅の駐車場にとめてあった車に傷がつきました。車の修理費用を請求することができますか?
  • 民法717条1項は「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。」と定めておりますので、屋根瓦の設置の方法に問題があった場合には隣家の住人(所有者が別であった場合は所有者に対しても請求できる可能性があります)に対して、車の修理費用を請求できる可能性があります。

    もっとも、屋根瓦が、しっかりと固定して設置するなどの備えが為されていたのにもかかわらず、お住まいの地域での震度がかなり大きかったために落ちてしまった、という様な場合には、不可抗力によるものとして、損害賠償請求が認められないこともあります。

    また、屋根瓦の設置に何らか問題があったとしても、震度が大きかったせいもあって落ちてしまったという場合には、損害の公平な負担という観点から、損害賠償額が一部減額されることもございます。
  • 私の住んでいる地域では震度6弱の地震がありましたが、地震で自宅のブロック塀が倒壊し、隣の家の壁を壊してしまいました。隣の家に損害賠償金を支払わなければならないでしょうか。
  • 自宅の建物や塀のように、土地に密着して築造された工作物のことを土地工作物といいます。その土地工作物の設置又は保存に欠陥やキズがあった場合、それによって第三者に損害が生じれば、法律上、占有者ないし所有者が責任を負うものとされています(民法717条)。したがいまして、自宅の塀が倒壊したことによる隣家の壁を壊してしまった場合には、塀の占有者ないしは所有者が損害賠償責任を負うのが原則です。

    しかし、いかなる場合にも責任を負うわけではなく、土地工作物の設置又は保存に欠陥や問題がある場合にのみ、その占有者もしくは所有者に損害賠償責任が生じます。

    ですから、その塀の設置又は保存になんらの欠陥や問題がない場合には、損害賠償責任を負うことはありません。

    この点、過去の宮城県沖地震の際に、ブロック塀が倒壊して通行人が死亡した事故の損害賠償責任に関し、仙台地裁は「地震そのものの規模に加えて当該建築物の建てられている地盤、地質の状況及び当該建築物の構造、施工方法、管理状況など」を総合し「本件ブロック塀の安全性を考えるについても、仙台市近郊において過去に発生した地震のうちの最大級のものに耐えられるか否かを基準とすれば足りる」とし、「ブロック塀が築造された当時、通常発生することが予測可能な震度5の地震動に耐えうる安全性を有していたか」を基準とした上で、「本件では未だ右瑕疵があったとは認められない」として、ブロック塀の所有者の損害賠償責任を否定しています。また、ブロック塀の施工方法および構造に関する法的規制につき、建築基準法施行令62条の8は、震度5までは壊れないブロック塀の基準を定めています。

    これらの裁判例や法令によれば、土地工作物の責任については、震度6以上であれば自然災害に基づくものとして責任を免れることになりそうです。しかし、阪神淡路大震災以降、震度6以上の地震が発生している回数はすでに10回を超えていることを考慮すると、上記においてご紹介させていただいた裁判例が今回の震災において適用されるかは専門家の間でも見解が分かれるかと思われます。
  • Q2でブロック塀に瑕疵があり、損害賠償を払わなければならないとしても、ブロック塀を工事した業者に損害賠償金を請求することはできませんか。
  • ブロック塀の瑕疵が、設置当初から存在した瑕疵ということであれば、ブロック塀を工事した業者に対し不法行為に基づく損害賠償金の支払いを求めることが可能です。また工事から5年を経過していない場合には、工事請負契約に基づきブロック塀の修理や損害賠償を請求することが可能です。
  • 3年前に自宅を新築したのですが、今回の地震で家の壁に大きなひびがはいりました。近所の古い建物でもひびが入ったところはなかったのですが、建物を建築した請負業者や不動産業者に損害賠償などを請求することはできますか?
  • 建物のかべのヒビが住宅を建築した際の欠陥によるものであった場合、損壊から1年以内であれば、請負業者や不動産業者に対し、建物の修理や損害賠償を請求することができます。建物の損壊の度合いによっては契約を解除して支払った代金の全額を返還する様に求めることもできます。
  • 平成12年以前に新築住宅を購入したのですが、平成12年4月以降であれば瑕疵担保責任の特例があると聞きました。どのような制度か教えてください。
  • 平成12年4月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、新築住宅の取得における瑕疵担保責任の特例を設けており、従来、契約書で売主・請負人が瑕疵担保責任を負う期間が1~2年に限定されていたのに対し、この法律では瑕疵担保期間を最低引渡しのときから10年と義務付けています。従って、今回の震災により住宅の瑕疵が明らかになった場合に、住宅の取得が10年以内であれば、10年を経過する以前に瑕疵修補・損害賠償請求を行えば、売主・請負人の責任が認められる可能性があります。
  • 地震によって隣の土地との境界の塀が倒壊してしまいました。塀の建て直しの費用は私と隣人、どちらが負担しなければなりませんか?
  • 塀を自分の所有地内で立て直すのであれば、ご自身の負担で塀を立て直すことができますが、隣地との境界上にある場合には費用の負担が問題となります。

    民法223条は「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる」と定め、同224条が「境界標の設置及び保存の費用は、相隣者(となりあった所有者)が等しい割合で負担する」と定めておりますので、原則としては隣人と折半で塀を立て直すことになるでしょう。
  • 津波によって家が流され、隣家との間にあって境界標の杭もなくなってしまったので、隣家との境界線がわからなくなってしまいました。境界を確認する方法としてどのような方法がありますか?
  • 隣の家との間で所有する土地の範囲を決める方法としては、話合いでお互いが合意できればよいのですが、それが難しい場合には裁判所に民事調停や所有権確認・境界確定訴訟などを申し立てて土地の所有権の範囲を確認する方法があります。その際には、土地の境界線を画定するために双方が費用を分担して測量を行い、境界線を決めるための資料とすることがあります。また「筆界特定制度」といって土地の境界を決めるものではありませんが、登記上の土地の範囲を特定する制度があり、比較的簡易迅速に手続きを行うことができますので、この筆界特定を裁判所に申請して、境界を定めるための資料とすることも考えられます。
  • 今回の震災で倒壊した建物の解体・撤去を自分で処理業者に依頼して行おうと考えていますが、この費用は自分で負担しなければなりませんか?
  • 被災市町村による災害廃棄物処理事業に該当するものとして、市町村が撤去を行う場合には、個人で撤去費用を負担する必要はありません。もし、現段階で個人で撤去を行おうとお考えの場合には、事前に市町村の窓口に相談し、処理費用等の説明を行って下さい。市町村が解体撤去の必要性を認め、処理費用を適切と判断判断した場合には、国の補助事業の対象として、国から処理業者に費用が支払われることになります。
  • 津波で私の土地に第三者の車が流されてきました。所有者の居所がわからないのですが、自分の費用で処分をしなければなりませんか?
  • 現在、市町村の負担で車を回収し、保管して所有者を特定する作業が進められておりますので、ご自身の費用で処分を行う必要はありません。

マンション関係の問題(文責:弁護士 小笠原 理穂)

  • マンションの購入契約及び手付金支払が完了したところで、今回の地震が起きました。マンションはほぼ完成している状態ですが、建物全体が傾いており、到底住めそうにありません。購入契約を解除して、手付金も返して欲しいのですが可能ですか?
  • まずはお手元の不動産売買契約書をご確認下さい。多くの不動産売買契約書におい て、天変地変で建物が滅失したり、修復が不可能なほど損壊した場合の特約(売買代金決済時または所有権移転登記時より前の不可抗力による修復不可能な滅失・毀損は売主が責任を負う)が付されています。この特約が付されている場合、買主は購入契約を解除したうえ、すでに支払った手付金の返還を求めることができます。他方、天変地変による建物の毀損であっても、マンションの修復が可能な場合には、売主の責任で修復したうえ買主に引き渡すと記載されている不動産契約書が多いといえるでしょう。この場合は、不可抗力を理由とした購入契約の解除はできません。

    また、仮に不動産契約書に不可抗力に関する特約が付されていない場合、法律上、買主は売主に対し契約の解除を求めることはできず、売買代金を支払わなければなりません(民法534条)。

    もっとも、特約が付されていない場合や、建物修理が可能な程度の損壊であっても、買主が手付を放棄して契約を解除することは可能です(民法557条1項)。この場合、すでに支払った手付金は返してもらえませんのでご注意下さい。
  • 今回の震災でマンションが倒壊してしまいましたが、住宅ローンはどうなるのでしょうか?建物が無くなったのに、払い続けなければならないのでしょうか?
  • 仮に住宅ローンの契約者が亡くなられた場合には、団体信用生命保険が残りのローンを肩代わりしますが、そうでない場合には、震災により建物が倒壊して滅失したとしても、原則として、住宅ローンの支払義務は残ることになります。住宅金融支援機構(災害専用ダイヤル0120-086-353、午前9時~午後5時、電話相談は土日も実施)では返済の一時猶予に応じるほか、住宅再建や補修の低利融資制度もありますので、ご相談されてみてはいかがでしょうか。
  • マンションの壁にヒビが入り、そこから雨漏りが生じています。このような場合、誰に対してどのような請求をすることができますか?
  • マンションの専有部分の欠陥としては、通常、内装工事の欠陥や建具・備付器具の欠陥(戸棚・風呂釜・ガス器具・冷暖房器具)などの軽いものから、給排水・衛生工事の欠 陥、電気工事の欠陥などが問題となります。共用部分の欠陥としては、躯体部分の欠陥や屋外工事の欠陥などがあります。

    これらの各部分に瑕疵があると認められた場合、共用部分の瑕疵については、管理者・管理組合・又は区分所有権者が、専有部分の瑕疵についてはその部分の区分所有権者が、マンションの売主に対して、瑕疵修補(修理を求めること)を請求することができます。

       しかし、今回のような震度6~7の地震により生じたマンションのヒビは、マンションの瑕疵に基づいて生じたものではないと判断される場合もあります。このような場合には、売主に対する瑕疵修補請求は認められず、専有部分に生じたヒビについては各区分所有者が、共有部分は管理組合(ヒビが入ったことによる損壊部分が建物の価格の2分の1以下の場合には総会による普通決議が、2分の1を超えた場合には特別決議が必要です)が、その費用を負担して修理をしなければなりません。
  • 今回の地震で、階下の住人から「あなたの家の排水パイプが破損して、我が家の家財道具に損害を与えた。」と苦情を言われてしまいました。私に損害賠償責任はありますか?
  • まずは、マンションの管理会社に破損した排水パイプの箇所を特定してもらって下さい。今回、階下の方へ損害を与えた排水パイプの破損個所が共用部分にあれば、区分所有者個人が損害賠償責任を負う必要はありません(管理組合(区分所有者全体)が責任を負います)。管理規約で共用部分の範囲を定めていることが多いので、破損個所及びマンションの管理規約をご確認ください。

    仮に、排水パイプ破損箇所が、区分所有者の占有部分であった場合、地震が直接の原因となって破損した場合には、不可抗力として責任を負わないと考えられます。もっとも、地震以前から老朽化した排水パイプを放置していた等の事情がある場合には、損害賠償責任を問われる可能性もあります。また、地震によって水漏れが生じているのを認識しながら、元栓の閉鎖などによって水漏れを容易に防ぐことができたのにもかかわらず、そのまま放置した場合などにも、損害賠償責任を問われる可能性はあるでしょう。

    なお、給排水管の点検修理のために階下住人が階上の居住者宅への立ち入りを求めた際、これを拒絶すると損害賠償責任を問われる可能性がありますのでご注意ください。
  • マンションの被災とはどのようなものをいうのでしょうか?
  • マンションの被災には、まず、「滅失」と「損壊」があります。「滅失」とは建物の全部または一部が確定的に効用を喪失している状態、「損壊」とは滅失に至らない程度の損傷のことをいいます。
  • 滅失には小規模滅失、大規模滅失、全部滅失とあると聞きました。それぞれどのようなものですか?
  • 小規模滅失とは、建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失したときをいい(区分所有法61条1項)、大規模滅失とは建物の価格の2分の1を超えて滅失した場合をいいます(同条5項)。また、全部滅失とは、マンション全体が建物としての物理的存在を失い、完全に損壊した場合をいいます。
  • 小規模滅失と大規模滅失のいずれに該当するかで、なにが異なるのでしょうか?
  • 小規模滅失・大規模滅失のいずれに該当するかは、集会での復旧議決要件、議案の要領通知、復旧決議に賛成しなかった区分所有者の買取請求権の有無など、復旧の際の手続きに違いが生じます。
  • 小規模滅失の復旧について教えてください。
  • 小規模滅失の場合、占有部分の復旧は区分所有者が各自の負担で復旧しなければなりません。共有部分については、原則として集会の復旧会議によって行います。決議には、集会における区分所有者および議決権の過半数による決議が必要です(区分所有法61条)。集会の開催にあたっては、議案の要領を通知する必要はありません。復旧に要する費用は、特に規則に定めていなければ、決議への賛否にかかわらず区分所有者全員で共有持分の割合に応じて負担することになります。あるいは、復旧の出捐者が他の区分所有者に共用部分の持分の割合に応じて償還請求をすることになります(同条2項)。
  • 大規模滅失の復旧について教えてください。
  • 大規模滅失の場合も、占有部分の復旧は区分所有者が各自の費用負担となる点については、小規模滅失と同様です。しかし、共有部分の復旧については、集会における区分所有者および議決権の4分の3以上の決議が必要です(区分所有法61条5項)。大規模復旧は重要な議案ですので、集会の開催にあたっては議案の要領を通知しなければなりません(同法35条5項)。
  • 大規模滅失の場合、特別決議に反対した区分所有者は誰に対してどのような請求をすることができますか?
  • 大規模滅失の場合、その復旧への費用負担は多額であることから、特別決議に反対する区分所有者もいると思われます。そのような区分所有者に多額の費用負担をさせることは妥当でないことから、特別決議に反対した区分所有者は、賛成した区分所有の任意の一人又は数人に対し、決議のあった日から2週間を経過した後に、自己の所有する占有部分と敷地利用権を時価で買い取りを請求することができるとされています(区分所有法61条7項)。買取金額の合意が得られない場合には、裁判で決めることとなりますが、裁判所は代金の支払いにつき相当の期限を与えることができます(同条9項)。
  • 大規模滅失の場合ですが、復旧ではなく、建物を取り壊して建替えることを望んでいます。どのような手続きをとる必要がありますか?
  • 大規模滅失の場合には、復旧と建替えのいずれかの選択肢があるかと思いますが、建替えを選択した場合、非常に重要な決定事項になることから、一般の集会手続きに比べると、要件が厳しくなっています。管理組合の理事長は、集会日の少なくとも2か月前に招集通知を発する方法で集会を招集します(区分所有法62条4項)。また、集会日の少なくとも1カ月以上前に招集時の通知事項に関する説明会を開催しなければなりません(区分所有法62条2項)。そして、建替えの決議は、区分所有者および議決権の5分の4以上の多数で決議することによって成立します(同条1項)。

    他にも、決議事項について法律の細かい規定があります。
  • 決議をするにあたり、区分所有部分が共有になっていたり、一人の区分所有者が複数の区分所有部分を有している場合には、区分所有者の人数はどのように数えるのですか?
  • 区分所有者の数え方ですが、一つの専有部分を数人で共有している場合はこの共有者を数人で一人として計算し、一人の区分所有者が複数の専有部分を所有している場合は区分所有者としての定数を全部で一人として計算します(神戸地裁平成13年1月31日判決)。
  • 全部滅失の場合、管理組合はどうなってしまうのでしょうか。
  • 区分所有法55条1項1号によると、建物の全部の滅失は、管理組合法人の解散事由とされています。そこで、実質的に建物が全部滅失した場合には、区分所有権はなくなりますので、管理組合も消滅すると考えることも可能です。しかし、このように考えると、建物が全部滅失した場合に再建の決議をすることができなくなってしまいますし、これまで組合が徴収していた管理費の管理や借入金等の処理といった管理組合の仕事が未了のままとなってしまいます。そこで、全部滅失の場合であっても、管理組合は存続すると考えられます。
  • 全部滅失の際、建替えをするにはどうしたら良いのでしょうか?
  • 地震により全部滅失したとのことですので、今回の地震が「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」に基づく政令により指定された災害となれば、同法が定める手続きを経て再建することができます。この法律は、同法2条1項に定める政令指定災害によって全部滅失した区分所有建物に適用されますので、この法律に基づいて再建手続きを進めて下さい。
  • 具体的な再建手続きを教えて下さい。
  • まず、敷地共有持分の価格の5分の1以上を有する敷地所有者が、集会の1週間前に招集通知を発して、再建決議のための集会を招集します(同法2条3項、4項、区分所有法35条1項本文)。再建決議は、集会において、再建建物の設計の概要等の事項とともに、議決権の5分の4以上の多数で決議することになります(同法3条1項、2項)。決議においては、①新たに建築する建物の設計の概要、②再建建物の建築に要する費用の概算額、③費用の分担に関する事項、④再建建物の区分所有権の帰属に関する事項、を定めなければなりません(同条2項各号)。また、再建の決議は区分所有建物の滅失にかかる災害を定める政令の施行の日から起算して3年以内にしなければなりません(同法3条5項)。
  • 建替えに反対の区分所有者に対して、組合はどのような対応をすることができますか?
  • 建替えに反対した区分所有者に対しては、時価で区分所有権及び敷地利用権を売り渡すよう請求することができます(同法3条6項、区分所有法63条4項前段)。大規模滅失の場合は、復旧決議の反対者が賛成者に対して買取請求をすることができるのに対し、全部滅失の場合は、賛成者が反対者に対して売渡請求をすることができるのみであって、反対者からの買取請求は認められていません。
  • 決議に反対した区分所有者に対する売渡請求をするにあたり、「時価」とはどのように算定するのですか?
  • この場合の時価とは、売渡請求権行使の当時における区分所有権及び敷地利用権の客観的取引価額をいい、建替決議が行われた後の価額であって、建替えを前提とした取引価額によって算定されます。すなわち、建物を取り壊し、更地として有効利用が可能になった状態となった敷地の価額から建物の除去費用を控除した金額によって算定され、不動産鑑定士の評価を参考にしながら、各住戸の階層別・位置別効用比を乗じる等して時価を算定します(神戸地裁平成11年6月21日判決)。
  • 今回、集会を開こうとしても、区分所有者が行方不明で、集会の開催について連絡をとることができません。どのようにすれば良いのでしょうか?
  • 大規模滅失や全部滅失の場合は、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成が必要になることから、区分所有者が行方不明の場合には、決議要件をみたさず、決議をすることができない恐れがあります。この場合であっても、現在の法律では決議要件を緩和して復旧や建替えを行うことはできません。まずは区分所有者の緊急連絡先などに連絡を入れたり、マンションの敷地に管理組合の連絡先を記載した看板を立てておくなどされてみてはいかがでしょうか。

債務の処理、破産などの問題(文責:弁護士 片倉 秀次)

商取引等にかかわる問題(文責:弁護士 田中 竜介)

震災と保険について(文責:弁護士 大部 博之)

行方不明者の財産管理や相続など(文責:弁護士 渡邉 剛)

  • 今回の震災により親類の者が行方不明になってしまいました。その者の財産管理は誰がどのように行ったらいいのでしょうか?
  • その親類が未成年である場合と未成年である場合と扱いがことなります。

    1 親類が未成年であった場合
    その親類の親権者(通常は父と母)が生存していれば、法定代理人として、親権者が財産管理を行います。また、災害等で親権者が亡くなっていた場合には、後見が開始し後見人が法定代理人として財産管理を行いますが後見人が指定されていることはほとんどないと思われます。
    後見人が指定されていない場合には、未成年者・親族・利害関係人の請求によって、家庭裁判所が後見人を選任します。

    2 親類が成年である場合
    成年者の場合には事前に財産管理人が選任されていたかどうかによって、異なります。
    (1) 財産管理人が事前に選任されている場合
    任意後見人・成年後見人が選任されていれば、その者が、財産管理をします。また、行方不明者自ら財産管理人を置いていた場合には、その者が財産管理をしますが、このように財産管理人が存在することはあまりないと思われます。
    (2) 財産管理人が選任されていない場合
    財産管理人が選任されていない場合には(ほとんどの場合選任されていないでしょう)、家庭裁判所に財産管理人の選任の申立てを行い、財産管理人を選任してもらう必要があります。
    申立ては、推定相続人・債権者あるいは担保権者等の利害関係人や検察官が行います。単なる友人・知人は行うことはできません。そして、家庭裁判所が、調査の上、財産管理の必要性が認められれば、財産管理人を選任します。
    財産管理人は、原則として、財産の保存・利用・改良行為をする権限しかありませんので、財産を処分する場合には、家庭裁判所の許可が必要です。
    なお財産管理人でないものが、行方不明者の財産管理を始めてしまった場合には、事務管理行為として許容されることが多いでしょう。
  • 今回の震災により父が行方不明のまま、安否が確認できません。父の財産の相続はいつ開始するのでしょうか?
  • 認定死亡や失踪宣告が下されと相続は開始します。それまでは相続は開始しません。

    1 認定死亡制度
    認定死亡制度とは、震災・海難・山津波・洪水などの災難に遭遇した者が死亡したことは確実であるが、死体が発見されず死亡が確認できない場合には、官公署(警察署長など)が、死亡地の市町村長へ死亡報告をし、これによって本人の戸籍簿に死亡の記載を行う制度です。
    認定死亡は、死亡の蓋然性が極めて高い場合に行われ、戸籍記載の日に死亡したものとして相続が開始します。

    2 失踪宣告
    失踪宣告制度には2種類あるのですが、今回の震災等を原因とする行方不明は、危難失踪に該当するでしょう。震災・津波等の死亡の原因となる危難に遭遇して生死不明の状態が1年以上継続した場合には、家庭裁判所に失踪宣告の申立てを行うことができます。
    申立ては、身分上・財産上の利害関係がある者が行方不明者の住所地の家庭裁判所に行います。家庭裁判所は一定の手続きを経て失踪宣告を行うことになります。このような失踪宣告が行われると、危難の去った時に死亡したとして扱われ相続が開始します。
  • 今回の震災で1人暮らしの知人が死亡してしまいました。知人の財産管理や相続はどのようになるのでしょうか?
  • 知人に相続人がいるのであれば、相続人が財産管理をします。相続人がいるか否か不明の場合には、家庭裁判所が選任する相続財産管理人が、相続財産の管理と精算を行います。

    1 相続財産管理人制度
    相続人がいる場合には、相続人が、財産管理を行います。しかし、相続人は、被相続人と一定の身分関係にある者に限定されているため、相続人が存在しないという場合があります。この場合には相続財産を相続財産法人に帰属させ家庭裁判所の選任する相続財産管理人に管理と清算を行わせることになります。

    2 申立手続
    利害関係人や検察官が相続開始地の家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所が調査の上、選任の要件があれば、相続財産管理人を選任します。

    3 相続財産管理人選任後の手続
    相続財産管理人は、相続人の捜索をし、相続財産を管理し、債権者のために相続財産の精算等を行います。そして、残余財産があれば、特別縁故者に分与したり、国庫へ引き渡します。
    なお、相続人が存在し、その者が相続を承認した場合には、相続人に、相続財産を引き渡します。
  • 今回の震災により夫が死亡しましたがだれが相続人になりますか?
  • 妻は常に相続人になります。 
    妻以外では
    ①子供がいる場合には子供
    ②子供がいない場合には夫の直系尊属(夫の両親など)
    ③子供も夫の直系尊属もいない場合には夫の兄弟姉妹

    1 相続人
    (1) 子供
    被相続人の子は、第1順位の相続人です。実子なのか養子なのか、男女の別によって、相続人の地位には影響しません。
    なお、推定相続人である子供が、相続開始以前に死亡などによって推定相続人としての地位を失った時に、そのさらに子がいれば、その者が代襲相続人として相続します。
    胎児は、相続に関しては、「既に生まれたものとみな」されます。

    (2) 両親
    被相続人の直系尊属は第2順位の相続人であり、第1順位である子およびその代襲相続人がいない場合に相続人となります。複数いる場合には、親等の近い者が優先します。

    (3)兄弟姉妹
    非相続人の兄弟姉妹は、第3順位の相続人であり、第1順位および第2順位である相続人が存在しない場合に相続人となります。兄弟姉妹についても、代襲相続が認められています。

    2 相続分
    配偶者と直系卑属が相続人となる場合には、1:1の割合で、配偶者と直系尊属が相続人となる場合には、2:1の割合で、配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合には、3:1の割合で相続します。
    直系卑属・直系尊属・兄弟姉妹が複数いる場合には、各自の相続分は均等です。
  • 今回の震災で私の夫と夫の父親が死亡しました相続はどのように行われますか?
  • 夫と夫の氏父親が同時に死亡したと推定され、同時死亡者間では相続が行われません。

    1 同時死亡の推定
    災害が発生した場合、同一家族において、同時期に複数の者が死亡し死亡者間で、その死亡の先後が明らかではない場合が多いでしょう。
    死亡の先後が明らかではない場合には、同時に死亡したものと推定されます。
    同時死亡者相互間には、相続関係は生じません。よって、子がない夫婦が共に死亡した場合には、夫婦間での相続はないことになり、それぞれの財産は、それぞれの両親や兄弟などに相続されます。
    親子が同時に死亡した場合に、孫がいる場合には、親の財産については、孫が代襲相続します。

    2 同時死亡の推定と遺言
    義父が夫に遺言していた場合、すなわち同時死亡の推定が働く者同士においては、遺言の効力は生じません。

震災と消費者問題(文責:弁護士 田中裕美子)

震災と労働問題(文責:弁護士 櫻町 直樹)

  • 震災により一部の事業所が損壊し、採用内定者を実際に採用するのが困難な状況になりました。この場合、採用内定を取り消すことはできますか?
  • 内定者と会社との間には、「解約権留保付労働契約」が成立しており、内定取消しはこの「解約権」を会社が行使して労働契約を解消するものといえます。

    そして、解約権行使が有効と認められるためには、「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる場合」でなければなりません。 震災によって事業所等が損壊した場合において、復旧に相当程度時間を要し、かつ、他の事業所で就労させることが困難であるといった事情があるときには、解約権行使による内定取消しが有効とされる可能性は高いと考えられます。

    他方、震災により業績が悪化したことを理由として内定を取り消すという場合、当該取り消しは整理解雇に準じるものととらえることができますから、整理解雇が認められるための要件(人員削減の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続の妥当性)を満たす必要があります。業績悪化の程度が甚だしく、希望退職者募集や残業削減等による人件費カットでは対応困難という場合には、合理的な基準に基づき適切な人選を行うことで、内定取消しが有効とされる可能性が高いといえます。
  • 震災を理由に労働者が欠勤した場合の賃金支払いはどうすればよいでしょうか?
  • 欠勤の理由が、「物理的に通勤が不可能」である場合、あるいは「通勤は可能だが、余震等が懸念されるので出社したくない」という場合においては、賃金を支払う必要はありません。

    前者については、民法536条1項「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。」の適用により、債務者である労働者は反対給付、すなわち賃金を受ける権利を有しませんので、会社は賃金支払義務を負いません。

    また、後者については、労働者の責に帰すべき事由により債務不履行(労務の不提供)ですから、会社は、労務提供の対価である賃金を支払う必要はありません。
  • 派遣先の事業場が震災により操業できなくなった場合に、派遣元は休業手当を支払う必要がありますか?
  • 労働基準法(労基法)26条にいう「使用者の責めに帰すべき事由」は、民法536条2項にいう「債権者の責に帰すべき事由」よりも広いとされております。

    派遣社員に対する休業手当について、厚生労働省通達は「派遣中の労働者の休業手当について、労働基準法第26条の使用者の責に帰すべき事由があるかどうかの判断は、派遣元の使用者についてなされる。したがって、派遣先の事業場が、天変地変等の不可抗力によって操業できないために、派遣されている労働者を当該派遣先の事業場で就業させることができない場合であっても、それが使用者の責に帰すべき事由に該当しないこととは必ずしもいえず、派遣元の使用者について当該労働者を他の事業場に派遣する可能性等を含めて判断し、その責に帰すべき事由に該当しないかどうかを判断することになること」(昭和61.6.6基発333号)としております。

    上記通達によりますと、天災等によって派遣先の事業場が操業不能の場合であっても、諸般の事情を総合的に考慮した結果、派遣元の責めに帰すべき事由に該当すると判断されることがありうるということになります。
  • 震災が原因で欠勤せざるをえない状況ですが、欠勤により懲戒処分を受けることはありますか?
  • 欠勤せざるを得ない理由が「物理的に通勤が不可能」である場合には、労働者に帰責事由がないので、懲戒処分を受けることはないものといえます。
  • 震災により負傷してしまい、完治まではまだかかりそうです。会社から、就業規則に基づき休職扱いとし、6か月以内に職務に復帰できないようであれば休職期間満了により自然退職になると言われました。会社のこうした扱いは妥当でしょうか?
  • 就業規則で定められている休職規程のとおりに運用された結果、休職命令が発令されたような場合には、当該休職扱いは妥当といえます。

    他方、職務への復帰については、労働者が従前の職務に復帰することが困難であるような場合でも、他の職務であれば労務の提供が可能であるような場合には、労働者は「履行の提供」をしたものと判断され、会社には当該他の職務での復帰が可能かを検討すべき義務が生じるとされておりますので、こうした検討をしないままで自然退職として扱うことは許されないといえます。
  • 震災により会社の資金繰りが悪化し、給与支払いが遅延する可能性があります。どうしたらよいでしょうか。また、従業員一律の一時的な賃金の引き下げは可能でしょうか?
  • 給与の支払いが遅延した場合には、本来の支給日の翌日から起算して支払済みまで商事法定利率の年6%の割合による遅延損害金を本来の賃金額に加えて支払う必要があります。

    また、退職労働者の賃金(退職手当を除く)について、退職の日(退職日以後に支払期日が到来するものはその支払期日)までに支払が無い場合は、退職日の翌日から起算して支払済みまで年14.6%の遅延損害金を本来の賃金額に加えて支払う必要があります。

    また、賃金の引下げは労働者との間の雇用契約の内容を変更することですから、会社が一方的に行うことはできません。個別に労働者の合意を得るか、就業規則の変更を行う必要があります。

    就業規則の変更による場合、賃金の引き下げは「不利益変更」にあたりますので、労働契約法第10条「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なもの」という要件を満たす必要があります。
  • 会社に対して賃金の前払いを求めることは可能でしょうか?
  • 労働基準法第25条では「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。」とされておりますので、前払いを求めることは可能です。
  • 震災からの復旧のため出勤可能な従業員について時間外労働及び休日出勤を命じたいと思っていますが、問題はありませんか?
  • 労働基準法第33条1項においては「災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。」とされております。

    したがって、災害等により業務の必要が生じた場合、労働基準監督署の許可を得れば時間外労働・休日労働を命じることができます。
    「災害その他避けることのできない事由」とは、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合をいい、災害発生が客観的に予見される場合も含むとされております(昭和33.2.13基発90号)。

    具体的には、「災害その他避けることのできない事由」の許可基準は、おおよそ以下のような形で運用されております。

    【認める】
    ・ 急病、ボイラーの破裂その他人命又は公益を保護するため
    ・ 電圧低下により保安等の必要がある場合
    ・ 事業の運営を不可能にする様な突発的な機械の故障の修理

    【認めない】
    ・ 単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要
    ・ 通常予見される部分的な修理、定期的な手入れ
    (昭和22.9.13発基17号、昭和26.10.11基発696号)

    また、火災が発生した場合において、使用者が所定労働時間を終え帰宅している労働者を招集した場合も、「災害その他避けることのできない事由」のため「臨時の必要」がある場 と認められます(昭和23.10.23基収3141号)。
  • 震災を理由に一時帰休(レイオフ)を命じられました。その間の賃金は支給されないとのことですが、これは妥当でしょうか?
    また、賃金が支給されないのであればアルバイトをしたいのですが、就業規則上の兼職禁止条項に違反することになってしまうのでしょうか?
  • 労働基準法第26条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と規定しております。

    天災事変等の不可抗力の場合は、「使用者の責に帰すべき事由」にはあたらないため、使用者に休業手当の支払義務はありません。なお、ここでの不可抗力とは、①事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること、の2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。

    震災により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受けたために労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則 として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。

    他方、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていないが、取引先からの原材料入手が不能といった理由による休業の場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられます。

    もっとも、そのような場合であっても、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、「使用者の責に帰すべき事由にはあたらない」と判断される余地はあるものといえます。
  • 震災により会社の資金繰りが悪化したことを理由として、従業員を解雇することはできますか?
  • 震災を理由とした解雇であっても、これが無条件に認められるものではありません。整理解雇が認められるための要件(人員削減の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続の妥当性)を満たす必要があります。

    業績悪化の程度や、希望退職者募集や残業削減等による人件費カットでは対応困難という場合には、合理的な基準に基づき適切な人選を行うことで、整理解雇が有効とされる可能性が高いといえます。
  • 震災により会社が倒産した場合、労働者の地位はどうなりますか?
  • 会社が倒産した場合においても、労働者と会社との雇用契約が当然に消滅することはありません。いずれかが解約の意思表示をするまで、契約関係は存続します。会社側による解約の場合には、上述の「整理解雇」の要件を満たす必要があります。

    また、震災に起因する解雇であっても、会社は、労働者に対し、30日以前に解雇の予告をするか予告手当の支払いをしなければなりません。ただし、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」に、労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告や解雇予告手当の支払は不要とされていますので、会社がこの認定を受けた場合には、解雇予告手当の支払いを求めることはできなくなります。

    なお、この「天災事変その他やむを得ない事由」とは、天災事変のほか、天災事変に準ずる程度の不可抗力によるもので、かつ、突発的な事由を意味し、経営者として必要な措置をとっても通常いかんともし難いような状況にある場合を意味するとされています。また、「事業の継続が不可能になる」とは、事業の全部又は大部分の継続が不可能になった場合を意味するとされています。

    会社の倒産により退職を余儀なくされた場合に未払賃金があるときは、「賃金の支払いの確保等に関する法律」に基づく「未払賃金立替払制度」により、未払賃金立替払いを請求することができます。

    この制度は、1年以上事業活動を継続していた会社について、破産、特別清算、民事再生、会社更生等の法的整理が決定された場合(で、その事実を破産管財人等が証明)か、あるいは、こうした法的整理の手続はとられていないものの、事業活動が停止し再開する見込みがなく、かつ、賃金支払いができないことについて労働基準監督署長の認定があった場合(ただし、中小企業のみが対象)のいずれかを満たすときに、未払賃金のうち一定額について立替払いが認められるものです。

    【参考】厚生労働省ウェブサイトより
    平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う未払賃金の立替払事業の運営について
    http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000015rt9-img/2r9852000001607y.pdf

震災と税金の問題(文責:弁護士 伊東 孝)

被災者の人権について(文責:弁護士 斉藤 鈴華)

  • 被災児童・生徒が住民票を異動しないまま、転入学することは可能でしょうか?
  • 災害の有無にかかわらず、そもそも、学齢児童生徒については、住民基本台帳に記載されていない者であっても、当該市町村に住所を有していれば、受入れ側の市町村教育委員会において学齢簿を編製してもらって就学手続をとってもらうことができます。

    今回の震災による被害に伴い、ただちに住民票の異動の手続ができない等の事情がある場合でも、教育委員会・学校側は、各市町村の住民基本台帳担当部署と連携の上、復興が進み、態勢が整ってから異動の手続をとる等、適切に対応することになります。
  • 今回の震災による被害に伴い、避難のため短期間滞在する場合においても、現地の学校に、こどもを受け入れてもらえるでしょうか?
  • 文部科学省の通知「1.被災した児童生徒等の公立学校への受入れについて」においては、期間の長短に関わらず、被災した児童生徒等が域内の公立学校への受入れを希望してきた場合には、可能な限り弾力的に取り扱い、速やかに受け入れることとされています。

    なお、公立学校の受入れに際しては、当該学校の在籍者として受け入れてもらう転入学のほか、学籍は元の学校のまま、受入れ先の学校の活動に参加する等の事実上の就学など、多様な取扱いが想定されますので、被災された場所の状況や、各地方公共団体の実情等に応じて、弾力的に取り扱っていただくことを期待してよいでしょう。
  • 被災した高校生のこどもが他の高等学校に転学する場合にも、これまでの高等学校における学習の成果を転学先の高等学校において単位として認定してもらえますか?
  • 学校教育法施行規則第92条第2項の規定により、全日制の課程、定時制の課程及び通信の課程相互の間の転学又は転籍については、修得した単位に応じて、相当学年に転入することができることとされています。
  • 被災したこどもを区域外の公立学校へ受け入れてもらうためには、どこに相談すればよいのでしょうか?
  • 相談窓口としては、受け入れてもらいたい先の市町村の教育委員会になります。

    北海道 義務教育課 011-204-5769
    青森県 学校教育課 017-734-9895
    秋田県 義務教育課 018-860-5147
    山形県 義務教育課 023-630-2871
    茨城県 義務教育課指導担当 029-301-5226
    栃木県 教職員課小中学校人事担当 028-623-3385
    群馬県 義務教育課 027-226-4615
    埼玉県 小中学校人事課学事担当 048-830-6939
    千葉県 指導課教育課程室 043-223-4059
    東京都 義務教育課 03-5320-6752
    神奈川県 子ども教育支援課 045-210-8217
    新潟県 義務教育課 025-280-5604
    富山県 小中学校課 076-444-3449
    石川県 学校指導課小中学校教育グループ 076-225-1827
    福井県 義務教育課 0776-20-0575
    山梨県 義務教育課 055-223-1764
    長野県 義務教育課管理係 026-235-7426
    岐阜県 学校支援課 058-272-8749
    静岡県 学校教育課小中学校班 054-221-3140
    愛知県 義務教育課 052-954-6790
    三重県 小中学校教育室 059-224-2963
    滋賀県 学校教育課幼小中教育指導担当 077-528-4576
    京都府 学校教育課 075-414-5831
    大阪府 市町村教育室小中学校課 06-6944-6886
    兵庫県 学事課学事第2係 078-362-3758
    奈良県 学校教育課義務教育係 0742-27-9854
    和歌山県 学校指導課義務教育班 073-441-3681
    鳥取県 小中学校課指導係 0857-26-7512
    島根県 義務教育課学力向上推進グループ 0852-22-5576
    岡山県 指導課 086-226-7584
    広島県 指導第一課教育振興担当 082-513-4976
    山口県 義務教育課指導班 083-933-4600
    徳島県 学校政策課学力向上推進室 088-621-3136
    香川県 義務教育課教科指導グループ 087-832-3742
    愛媛県 義務教育課 089-912-2940
    高知県 小中学校課 088-821-4735
    福岡県 義務教育課学事係 092-643-3909
    佐賀県 学校教育課義務教育担当 0952-25-7395
    長崎県 義務教育課義務教育班 095-894-3373
    熊本県 義務教育課義務教育指導係 096-333-2688
    大分県 義務教育課 097-506-5533
    宮崎県 学校政策課義務教育担当 0985-26-7239
    鹿児島県 義務教育課義務教育係 099-286-5300
    沖縄県 義務教育課 098-866-2741
  • 被災した妊産婦の支援を行う団体にはどのようなものがありますか?
  • 日本助産師会では、妊産婦・母子・女性のために、電話相談(下記リンク参照)をはじめとした支援を行っています。また、携帯電話から助産師にメールで健康相談ができる窓口である「マタニティ・サポート」も開設されています。

    子育て・女性健康支援センター 一覧
  • 外国人被災者の支援をしてくれる団体として、どのようなものがありますか?
  • 各県の国際交流協会、各種NPO法人(NPO法人「多文化共生マネージャー全国協議会」等)があります。法務省入国管理局でも、相談を受け付けているインフォメーションセンターがあります。
  • 被災して在留期間更新申請ができなかったときは、どうなりますか。どうすればよいでしょうか?
  • 原則、在留期限満了前に申請をすべきものですが、在留期間が経過してから申請された更新も、震災の遅延が天災の場合には、特に申請を受理しても差し支えないと認められる場合があり、「緊急やむをえない場合」として、「特別受理」してもらえる可能性があります。

    今回の申請では、青森、岩手、宮城、福島、茨城各県の特定区域にいた外国人で、外国人登録原票に登録された居住地が特定区域にある人については、在留期間が平成23年8月31日まで延長されることになっており、その間は、許可を得なくても不法滞在になることはなく、適法に在留・出国できます。
  • 今回の震災で、急いで出国したため再入国許可をとらなかった外国人留学生は、再度ビザを一から取り直す必要があるのでしょうか?
  • 4月からの新学期に臨みたい場合、新しいビザが必要となりますが、現在、特例として手続を簡略化して、極力短期間で、ビザの発給が受けられるように運用されています。最寄りの日本国大使館・領事館又は、外務省領事サービスセンター査証班(03-5501-8431)が相談に乗ってくれます。
  • 避難先の避難所や仮設住宅でも、介護保険の給付は受けられますか?
  • 別市町村等に避難した場合でも、お住まいだった市町村等からの介護保険の給付を受けることができます。介護保険の保険給付は、基本的に住民票が基準となるので、給付市町村等に住民票がある方が大震災により一時的に別市町村等に避難した場合でも、給付市町村等から給付を受けられることになります。
  • 被災により、保険者証をなくしてしまった、又は家に置いてきてしまった場合でも、サービスは受けられますか?
  • 被保険者証の提示がなくとも、市町村が保険給付費相当額を指定居宅サービス事業者等へ直接支払うこと(代理受領方式による現物給付化)ができますので、同様のサービスが受けられます。この場合においては、氏名・住所・生年月日を申し立てることにより、被保険者証を提示したときと同様のサービスを受けられる取扱いとされます。

    また、要介護認定(要支援認定を含む。以下同じ。)については、下記のような取扱となっています。

    ・新規の要介護認定申請前にサービスを受けた被保険者に対しても、市町村の判断により特例居宅介護サービス費等を支給します。
    ・要介護認定及び要介護認定の更新等の申請を行う者が、上記の事情により、被保険者証の提示ができない場合においても、申請は受理されます。
    ・要介護認定の更新申請をすることができる方が要介護認定の有効期間の満了前に申請をすることができない場合についても、要介護認定の更新申請があったものと見なし引き続きサービス提供を行うことができます。

津波による被害の問題(文責:弁護士 白木 孝二郎)

  • 所有する自動車が津波で流されて行方不明となりました。登録の抹消手続きは必要でしょうか?
  • 4月1日時点における自動車の所有権者に対しては、同日に1年分の自動車税が課税されることとなっています。そこで、このような税負担を避けるためにも自動車登録の抹消を行っておいた方が宜しいでしょう。廃車等を行い、運輸支局で抹消登録を行った場合は、抹消登録を行った翌月以降の税額が還付されることとなります。

    なお、軽自動車の場合には、年度途中(4月1日以降)に廃車手続きを行っても、軽自動車税の還付はされないこととなっております。もっとも震災にあった軽自動車で諸事情により、4月1日までに廃車の手続きが出来なかった場合には、例外的に軽自動車税の還付に対応してくれる自治体もございます。詳細に関しましては、各自治体の税務課にお問い合わせください。
  • 上記の質問とも関連しますが、自動車登録の抹消手続の方法を教えてください。
  • まず、自動車登録の方法には、永久抹消登録と一時抹消登録の2種類があります。永久抹消登録を行うと、後に行方不明となった自動車を発見しても当該自動車を再登録したうえで使用することはできなくなるというデメリットがあります。自動車税の還付を受けるためには、一時抹消登録の手続きを行えば足りますので、とりあえずは一時抹消登録の手続きをしておくことも選択肢の一つとしてよいでしょう。ただ津波による被害が深刻で、行方不明になった自動車を発見できる可能性が乏しく、更にたとえ発見できたとしても浸水により当該自動車を再使用できる可能性に乏しい場合には、永久抹消登録の手続きを行うことをお勧め致します。

    なお永久抹消登録申請の際には、印鑑登録証明書・罹災証明書・ナンバープレート(2枚)及び自動車検査証等の書面が、通常必要とされますが、国土交通省による特例措置(「被災車両の永久抹消登録申請時の特例的取扱い」)により、理由書の提出によってこれらの書面の提出に代えることができる場合がございます。詳細につきましては、以下の運輸局にお問い合わせください。

    ・東北運輸局 022-791-7533
    ・青森運輸支局 017-739-1508
    ・青森運輸支局八戸自動車検査登録事務所 0178-20-3161
    ・岩手運輸支局 050-5540-2010
    ・宮城運輸支局 022-235-2517
    ・秋田運輸支局 018-863-5871
    ・山形運輸支局 023-686-4714
    ・山形運輸支局庄内自動車検査登録事務所 024-546-0345
    ・福島運輸支局いわき自動車検査登録事務所 050-5540-2016
  • どうしても戸籍謄本が必要な事情がありますが、津波で市役所が機能停止し、あるいは市役所が保管していた戸籍原本が流されたとのことで発行してもらえません。どうしたらいいでしょうか?
  • まず、前提知識として、戸籍については,市町村において戸籍の正本が備え付けられており,管轄法務局において戸籍の副本及び届書が保存されています。震災によって、戸籍の正本が滅失した場合には,管轄法務局で保存している戸籍の副本等に基づき戸籍が再製されることとなります。したがって、市役所保管の戸籍原本が流されたとしても、市役所機能が回復し、戸籍が再製されれば、通常通り問題なく戸籍謄本は発行されます。

    また戸籍の正本が再製されるまでの暫定的な措置として、地方自治体によっては市町村又は管轄法務局において,戸籍の副本(電子データ)に基づき,「戸籍の副本に係る証明書」(行政証明)を発行してくれることもあります。この取り扱いは、各自治体によって対応が異なりますので、詳細に関しましてはご自身の戸籍原本が備えつけられてあった自治体にお問い合わせください。

    [参考・東北地方太平洋沖地震により滅失した戸籍の再製について(法務省サイト)]
    http://www.moj.go.jp//hisho/kouhou/saigai0010.html
  • 私の私有地上に津波で流されてきた自動車や船、瓦礫などが放置されています。誰に撤去を求めればよいですか。その費用は誰が負担するのですか?
  • 自動車や船等の所有者が判明し連絡が取れるのであれば、その所有者に対して撤去を求めることも可能ですが、そもそも津波被害の場合には、所有者が判明しないことも多いでしょうし、相手も被災者であり、すぐに撤去に応じてくれる経済的な余裕がないことも少なくないでしょう。そこで、まずは自治体に対して、連絡をし、公費で撤去してくれるよう要請をすることがよいでしょう。

    なお政府は、東日本大震災で倒壊した家屋や津波で流出した自動車などのがれき撤去費用を国庫負担することを決定しています。
  • 所有する船や自動車が津波で流されて、他人の家屋を壊したらしいのですが、私に責任はあるのでしょうか?
  • 不法行為に基づく損害賠償請求が認められるかが問題となりますが、今回のような未曾有の大津波が原因であるケースにおいては、あなたに「過失」が認められないとされる可能性が高く、あなたが損害賠償責任を負う可能性は少ないといえるでしょう。
  • 土地の一部又は全部が滅失したときの登記はどうなるのでしょうか?
  • 既登記の一筆の土地の全部が公有水面下の土地になるなどして、その所有権が消滅したときは、土地が滅失したとして、所有権の登記名義人は滅失の日から1ヵ月以内に、土地の滅失登記を法務局に申請しなければなりません(不動産登記法42条)。この場合、権利の客体の滅失によって当該土地に関する権利はすべて消滅するので、抵当権等の所有権の登記以外の権利に関する登記名義人の承諾は特に必要ありません。

    また、土地の一部が滅失した場合には、地積の減少として取り扱われますので、所有権の登記名義人は、一部滅失後の当該土地の地積測量図を添付して法務局に地積変更登記を申請する必要があります。
  • 私の土地は河川の傍らにありましたが、津波により瓦礫、建物の残骸、土砂等が流入し、様変わりしてしまいました。このままでは利用することができませんが、土地の滅失にあたるのでしょうか?
  • 判例(昭和61年12月16日)によると、「人による支配利用が可能でありかつ他の海面と区別しての認識が可能である限り、所有権の客体たる土地」としての性質を失わないとしています。同判例からすると、ご相談者の土地は、瓦礫等を取り除けば再び土地としての支配利用が可能であること、河川とは明確に区別された土地として存在していることからして、土地の滅失にはあたりません。
  • 土地の全部又は一部が津波により滅失した場合に、公的補償はないのでしょうか?
  • 残念ながら、少なくとも現在(2011年4月16日)のところ、津波による土地の滅失に対する公的補償は用意されておりません。なお建物については地震による津波が原因で建物が損壊した場合であれば、地震保険に加入していれば、補償が受けられる可能性がございますので、保険会社にご確認ください。
  • 津波により建物の天井近くまで浸水し、部屋の中は割れた窓から入った瓦礫や建築物の残骸、土砂などでいっぱいの状態ですが、建物自体はゆがんでいません。この建物は全壊といえるのでしょうか?
  • 基本的に、「全壊」、「大規模半壊」、「半壊」等の被害認定は、市町村が「災害の事実認定基準」に基づいて、外観目視調査及び内部立入調査により行うこととなります。基準についての詳細については、以下の内閣府のサイトが参考となります。

    [参考・災害に係る住家の被害認定についての基準]
    http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/gaiyou.pdf

    そして、(津波等の)浸水による住宅被害の認定については、内閣府が下記のサイトにおいて基準を発表しています。

    [参考・浸水等による住宅被害の認定について]
    http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/higai.pdf

    同基準によると、①浸水により畳が浸水し、②壁の全面が膨張しており、③さらに、浴槽などの水廻りの衛生設備等についても機能を損失している場合には、一般的に「大規模半壊」又は「全壊」に該当することになるとされています。

    このように、建物自体の構造が歪んでいなくとも上記①から③のような事情があれば、「全壊」と判定されることはあります。
  • 大津波により、防波堤が決壊し、家屋が破壊されましたが、国家賠償を請求できるのでしょうか?
  • 国家賠償法2条1項は、「①道路・河川その他の公の営造物の設置、管理に瑕疵があり②その瑕疵によって他人に損害が発生したときには③国または公共団体はこれを賠償する責任を負う」と定めています。そして、海岸(海)は自然工物としての「公の営造物」に該当すると考えられるため、国又は公共団体による海岸(海)、ひいては防波堤の「設置、管理に瑕疵」があれば、国家賠償法2条1項を根拠に国または公共団体に対して、賠償請求を行うことができる可能性があります。

    裁判では国・公共団体に「設置管理の瑕疵」が認められるかが争点になると考えられます。従前の判例によると「瑕疵」とは、「営造物が通常有すべき安全性を欠き、他人に危害を及ぼす危険性のある状態にあることをいう」ところ、「かかる瑕疵の存否については、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべき」としています。そして、海岸や河川のような自然公物についての瑕疵の判断については、それらが、もともと洪水、津波等の自然的原因による災害をもたらす危険性を含んだものであることから、財政的、技術的、社会的な制約のもとでの一般水準及び社会通念に照らしても通常有すべき安全性を備えていなかったといえるか、という観点から判断がなされることとなります。

    これらの基準に照らすと今回の津波による被害についても、被害を被った地域において過去の津波の程度、頻度、そこから想定される最大の津波の規模に照らして、防波堤の強度は、前記した様々な制約を加味したとしても適切であったか、その他行政の防災体制に不備はなかったか等の事情が総合的に判断されることとなります。今回の津波が想定を超える規模のものであったことからすると、請求が認められることは、容易ということはできないと考えられます。